はじめに
Twitterは多大なる可能性があり、ものすごい価値を世の中に提供している会社・サービスだが、同じレベルの価値を捉えてない。そのため、多くの人はTwitterに対してフラストレーションを抱いている。ただ、そんなTwitterがここ数ヶ月でかなり面白い動きを見せている。
複数の会社の買収、そして自社開発している音声SNSはTwitterがこれから元々自社の優位性だったディスカバリー・ディストリビューションするサービスからコンテンツ制作及びエンゲージメントプラットフォームへ進化するように見える。これが本当にTwitterのビジョンであって、ちゃんとビジョンを実行出来ればTikTokやFacebookと対等に戦えるプラットフォームになるかもしれない。
今回の記事では、Twitterの最新動向から考えられる今後の戦略、その偉大なるポテンシャル、そして成功・失敗するかもしれない理由を解説します。
Twitterが買収した会社
昔はTwitterは多くの会社を買収していた。2011年から2015年の間で44社買収していたのが、2016年では3社、2017年では0社、2018年では1社、2019年では3社、そして2020年では3社とペースダウンしている。そんなTwitterだったが、2020年12月と2021年1月の買収履歴を見てみると、
1ヶ月ちょっとで5社の買収はTwitterとしては凄い早いペース。そのため、Off Topic含め色んなメディア企業はTwitterが大きく方向性を変える、新しい取り組みを行うと読んでいる。それを理解するためには、まずTwitterが最近買収した会社を見てみましょう。
Squad
2020年12月に買収されたソーシャルスクリーンアプリ「Squad」は、若者層から人気のアプリで、コロナの影響も追い風になり更に伸びた。TechCrunchの記事によると、3月前半の2週間で利用が54%増え、3月後半には1100%増加となった。
Twitterは、Squad買収により、Squadとしてのサービスは終了し、Twitter内に組み込むことをプロダクト開発責任者のイリヤ・ブラウンが投稿。
Ueno
2021年1月にTwitterはクリエティブエージェンシーのUenoを買収したと発表。Uenoは過去に何度もTwitterと一緒にプロダクトのデザインやUX改善を行ってきたが、Twitter以外にNew York Times、Apple、Slackなどの大型プロジェクトを担当してた。
Uenoを買収したのはチームのためなので、Twitterは今後Uenoのチームメンバーを色んな新規プロジェクトに関わってもらう予定。
Breaker
Uenoを買収する数日前にTwitterはソーシャルポッドキャストアプリのBreakerを買収。2016年に設立したBreakerは2020年末時点では番組数が70万超えてたが、ポッドキャストのアプリランキングでは10位とメジャーアプリにはなれなかった。
こちらもUenoと同じようにBreakerチームをTwitterが採用したかった。サービス自体は別の会社が引き取ることになり、BreakerチームはTwitterの音声サービス(Twitter Spaces)の開発に取り組むことがわかった。
Revue
2021年1月末にTwitterはSubstack競合のメルマガ配信サービスのRevueを買収。Revueは$17Mの売上を持つSubstackと比較するとかなり小さいプレーヤーで、まだ6名体制だった。
TwitterはRevueをそのままプロダクトとして開発し続けながら、Twitterとの連携を進めると語っている。今回の買収はTwitterがロングフォームコンテンツ(メルマガ・記事)の市場へ入り込むと噂されるきっかけとなっている。
この買収は一旦個別で関係ないものに見えるかもしれないが、実は大きくTwitterの今後の戦略に繋がるものになるかもしれない。この戦略を理解するためには、まず最もTwitterが今後注力するであろう音声SNSとメルマガ配信をどうTwitterが侵入して拡大出来るかを解説していきます。
Clubhouseに対抗する音声SNS:Twitter Spaces
2020年に音声SNSアプリのClubhouseが人気になり始めた。当初は音声版Twitterとも言われていたが、初期のユースケースはTwitterなどのニュースや何かの情報についてディスカッションするアプリとなっていた。そのため、多くのアメリカのVCはClubhouseを始めた当初はTwitterの利用時間が減ったこと発言していた。
Off Topicでも2020年4月からClubhouseを追っている中、Twitterが買収するべきことを語ってました。
それに気づいたのか、Twitterは2020年12月に音声ベースのチャットルーム「Twitter Spaces」を検証し始めた。
そもそもその前からTwitterは音声機能を追加したのと、会社の創業時(当時はOdeoと言うサービス名)もポッドキャストプラットフォームを作ってた。そして直近ではSquadやBreakerを買収したのは、Twitterとしては本気で音声領域に入り込もうとしている証拠。
ベーシックな機能としては、ClubhouseやChalkと似たように話している人やリスナーのプロフィールアイコンが写り、音声ベースでの部屋を簡単に立ち上げられるプラットフォーム。Clubhouseと同じように、部屋に入って会話を聞きながらTwitterのアプリでブラウジングが可能ですし、他のアプリにいっても音声は途切れない。どのようなUIになっているかを見たい方は、以下動画をご覧ください。
今現在だとTwitterのストーリーズ機能のFleetsと同じ場所に出てくる。色合いを紫色にして、人数の表記やSpacesのアイコンを入れている。
今はTwitterのスマホアプリ内でしか対応してなく、まだバグが多く。特に音声クオリティーが低く、場合によっては途中で音声が聞き取れないケースが多々ある。特にAirPodsを使っている人の方が音声クオリティーが低いと言う噂も出ている。
そんな中、Clubhouseとはいくつか機能的な違いと、プロダクトの方針の違いがあることがわかります。
Clubhouseとのプロダクト方針の違い
Clubhouse創業者のPaul Davidsonは1月後半にClubhouseは動画展開は絶対行わないとユーザーからQ&Aを受けるTownhallで発言した。そして、同時にClubhouseのRoom(部屋)をプラットフォーム・会話の中心機能として活用し続けたいと話した。明確には語ってないが、これは恐らくClubhouseを音声メインとしたプラットフォームとして続けて、音声と一緒にそのほかの体験・コンテンツ提供をあまり考えていないと理解している。
Twitter SpacesのUI・機能を見ると、Clubhouseとはかなり違う戦略をとっているのが見える。Clubhouseは部屋、いわゆる音声の会話をコンテンツの中心にする予定だが、Twitter Spacesは音声だけではなく、色んな共有コンテンツをベースに会話が出来るようなプラットフォームにしているのが見える。
Clubhouseとの機能の違い
まず、最も分かりやすい違いはTwitter Spacesだと部屋のスピーカー・モデレーターがツイートを表示できること。ツイートがTwitter Spaces内のUIで現れ、それを他のスピーカーやリスナーが読んで、それについて会話ができるようになっている。
複数のツイートが共有された場合、スワイプして他のツイートを見れるようになっている。
今までだと会話につながるような情報、面白いMeme、プロダクトの紹介など、様々なユースケースが出ている。大体新しいツイートが共有されると、当然ながらそのツイートをみんな見てそれについて話す。それを考えると、一切画面を見なくても良いClubhouseとは少し違う使われ方が想定される。
さらに、Twitter Spacesでは書き起こしボタンがある。
アメリカだと英語の書き起こしの精度がかなり上がっている。Google Hangoutsなども似た機能があるが、Twitter Spaceだと音声の質が悪いので、スピーカーの話が聞こえなく書き起こしに頼るケースもあった。
そして、Clubhouseだと基本的に誰もスピーカーが話していることに対してリアクションが出来ない。唯一使われているのはスピーカー同士でマイクのオンオフを激しく表示して今話しているスピーカーに対して拍手や賛同の気持ちを見せるだけ。リスナーは一切リアクションが出来ないため、スピーカー側は話がリスナーにとって面白いのかが分からない。Clubhouseとしてはこれをあえてやっていると思われている。だからこそ部屋の人数を部屋の中にいる間は表示しないUIに設計している。
それと比較してTwitterは他のスピーカーもリスナーも絵文字を使ったリアクションが可能。
今出せる絵文字は5つしかない:💯🤚✊✌️👋
絵文字を増やすリクエストはかなり多いらしく、モデレーター・スピーカー側とするとどの話が響いているかが分かりやすくて高評価。ベータ版であまり広がっていないからかもしれないが、Twitter Spacesユーザーにヒアリングしたところ、Clubhouseより小さい部屋で友達同士で話しているイメージがあると言っている。
重要なのはツイートの表示、書き起こし、絵文字リアクションは全て音声以外のインタラクション機能・方法なのが、Twitter SpaceとClubhouseの根本的な違いとなります。そうするとTwitterはもしかしたらClubhouseと最初だけ競合して、最終的にはTwitch、Zoom、イベントサービスと競合する形になるかもしれない。Color CapitalのChris Cantinoさんが予測するには、以下のようなユースケースがTwitter Spacesだと考えられる:
・SpaceXのロケットの打ち上げイベントをElon Musk自身がライブ配信する
・ミュージシャンが新しい音楽のリリースするタイミングで作る際にサンプルやNGテイクを見せる
・教育系のレクチャーをやる際に図やビジュアルを見せる
・投げ銭が一定数超える際にアンロックされるコンテンツ
この方針を考えると、Twitterは音声・会話をメインというより、共有できるコンテンツ体験を軸としてSpacesを作っていて、それを後々プラットフォーム化する戦略を取っていると思われる。
音声をきっかけにプラットフォーム化
Twitterは何故この方向性に向かっているのか?これは後ほど具体的に説明するが、Twitterは新規ユーザーの獲得、既存ユーザーのエンゲージメントの増加、そしてマネタイズオプションを増やす必要がある。その中でも特にプラットフォームが重要視しているのは既存ユーザーのエンゲージメントとマネタイズ。Twitter Spacesはどちらとも解決できる機能。
まずエンゲージメントを高める方法としては、Spacesを開発する際にTwitterは今後恐らくツイートの共有以外に、ライブ動画や他のコンテンツの共有を試せるようにするはず。
まずはライブ配信もしくはその他の動画コンテンツで、NetflixのWatch Party機能と似たようなユースケースが思いつく。それ以外にもTwitterが買収したRevue上で作られた記事を一緒に読むことも可能になる。記事以外にもスライドショーやプレゼンなども行われる可能性がある。将来的にはスタートアップがVCに対してピッチイベントも行えるようになる(クローズドルームだと営業などもTwitter Spacesで行える)。それ以外に既存のTwitter機能だと投票機能、そしてイベントなどでQ&Aとしてよく活用されるSlidoなどをコピーして質疑応答を出せるようにするなど、一つのスペースに参加者が全員集中できる共有体験をTwitterが試しそう。
そして、SnapchatのAR戦略と似たように、自社で試してから第三者に広げて、Twitterは更なるユースケースやエンゲージメント方法を探してもおかしくない。
Twitter SpacesがSnap Mini化?
Spacesがエンゲージメントを上げられるとTwitterが確信した際に、次のステップはその共有コンテンツのスペースの上に色んな体験が作れるように、第三者にオープン化する。これはWeChatのMini ProgramsやSnap Miniと似たような考えで、Spaces内でTwitterが持っていないアセットを繋ぎこむチャンスでもある。
ゲーム会社がミニゲームを開発したり、Hopinなどのイベント会社がTwitterで簡単にイベントの開催と管理ができるようにするなど、色んな新しいユースケースが考えられる。そうするとAppleやGoogleと似たようなアプリエコシステムを保有して、プラットフォームの価値を高めながらユーザーを他のプラットフォームへ流入させないようになる。
TwitterがSpaces Mini的なプラットフォーム的なポジションを取らないかもしれない理由は会社がニュース・情報系のコンテンツにフォーカスしているから。元々Facebookに追いつけないと理解してニュースへフォーカスしたのがTwitterが成長した理由でもある中、再度他のプラットフォームと違うコンテンツで戦うのはTwitterとしては危険な動きかもしれない。
マネタイズ
Twitter Spacesのマネタイズはかなり幅広くなる可能性がある。今現在だとClubhouseが今後検証するマネタイズオプションと似ていて、イベントのチケット、投げ銭、そしてサブスクが考えられる。ただ、Twitter Spacesの強さは本当に共有コンテンツが人気になれば、そこで色んな新しいマネタイズ方法が生まれる。有料コンテンツ化、API使用料、アプリ内課金の手数料(AppleやGoogleと同じように)。
しかも共有コンテンツを見なく、Twitterのアプリ内をスクローリングさせることによって、Twitterは既存の広告ビジネスを見捨てずにSpacesを立ち上げることが出来る。
ディスカバリー課題の解決
Clubhouse含め、多くの音声スタートアップの大きい課題はコンテンツディスカバリー。Clubhouseだとフォロワーベースで通知がきたり、部屋がフィードで表示される。Twitter Spacesも同じくフォローしている人がTwitter Spacesを作ると、Fleetsと同じ場所に浮かぶ。ただ、これだけだとそこまで使われないかもしれないので、もし音声スペースが人気になれば、Twitterは色んな場所にSpacesのディスカバリー機能を入れられることが一つのアドバンテージポイントである。
Twitter Spacesは共有コンテンツがツイート、記事、動画、画像などと考えると、そのコンテンツに対してSpacesを当て込むのが自然な流れ。Chris Cantinoさんは三つの事例を出してます:
・ホーム画面のフィード内で一つのツイートの下にSpacesのアイコンが表示される
・おすすめフィードのライブ配信動画にSpacesのアイコンが表示される
・検索結果で記事のツイートにSpacesのアイコンが表示される
結局Twitter Spacesの使用が何かの特定のトピックや共有コンテンツに対しての会話・音声体験であれば、自社サービス内のコンテンツを軸としてSpacesへ誘導させられる。これは今現在の膨大なTwitterトラフィックを活用しているため、Clubhouseには無い力となる。
音声からの興味グラフの強化
Twitterはどのプラットフォームよりも興味グラフを作れる会社(TikTokは違うアングルから興味グラフを作っていますが)。特にニュースや情報系の話はTwitter上では盛んでツイートのスレッドや返信などで会話データも一部取得は出来ている。ただ、Spacesはそれ以上の深いデータをTwitterが取得できるようになる。既に書き起こし機能があるのは分かっているので、そのデータをTwitterが上手く分析・カテゴライズ出来ると、今まで以上の興味グラフを作れる。
それは後々広告に繋げたり、Twitterの今後のサービスに活かせる、長期的なアセットとなるはず。
Substackにプレッシャーを与えるメルマガ連携
2020年に人気ななったメルマガ配信プラットフォームのSubstackに対抗するためにTwitterは競合サービスのRevueを買収した。特にTwitterとして気になったのはニュースメディアの記者が独立してSubstackを始めたこと。Twitterのコアビジネスはニュースコンテンツを扱うことでもあるので、ニュースや情報を提供する人たちがメディア企業から他のプラットフォームに移行するのは注意しているはず。その影響なのか、New York Times記事によると2020年にTwitterは社内でSubstackの買収を検討した。
Revueの買収はBreaker買収やTwitter Spacesの開発よりも遥かにTwitterに相性の良い買収になるかもしれない。TwitterはSubstackや他のメルマガサービスより圧倒的に強い優位性を持っている。その優位性とはディストリビューション、いわゆるユーザー獲得能力。
Twitterの強みはディストリビューション
今だとSubstackやMediumなどのユーザー獲得方法は主にTwitter。大体どのコンテンツ制作サービス、特にニュースや情報系のプラットフォームはTwitterを活用してコンテンツのディスカバリーが行われる。TwitterはSNSという見方もあるが、どちらかというとディストリビューションネットワークに近しいかもしれない。
Substackはメルマガ配信を始めるには的確なサービスだが、スケールするとSubstackの手数料を嫌がり、プラットフォームから離脱する人たちが増えている。StratecheryのBen Thompsonさんが言うように、あるメルマガ配信者が毎年$1Mの売上を達成した際に、Substackはその10%を取るので、少なくとも$100K分の価値をライターのために提供しなければいけない。Substackはそのためにライターが書きやすくするプログラムやリーガルサポートなどのインフラ周りを固めているが、結局一番ライター側が欲しいのはユーザー獲得。
今Substackの最も強いディスカバリー機能はコンテンツをTwitterにシェアして拡散させるか、Substack上で自分がTwitterでフォローしている人がSubstackを作っているかチェックできる機能。
特にこの二つ目のユーザー獲得方法は素晴らしいが、両方ともTwitterに依存している戦略となる。Twitterがもし自社のメルマガ配信サービスを始めたら、Substackで作る理由はどこにあるのかが問われるようになる。
Twitterとの連携方法
Twitterが本気でメルマガ配信サービスを既存プロダクトに埋め込むと、色んな可能性が生まれる。まずTwitterは既にメールアドレス情報を持っているため、メルマガを作るのがワンクリックで出来るようになる。実際にRevueとはこの実装が既に完了している。Revueのホームページにいって「Start a newsletter for free」をクリックすると、Twitterで登録が出来るようになっている。
次にTwitterはアプリ内にエンゲージメントが高いメルマガをフィード内に表示したり、場合によっては別のタブを作ることもできる。ニュースや情報系のツイートに関しては、関連するメルマガをプッシュすることも可能。そのプッシュを一部広告としてマネタイズも可能になる。さらに、そのメルマガにクリックしたユーザーは場合によってはTwitterアプリ内でメルマガ自体も読めるようにしたり、メルマガ内のテキスト、画像、動画を簡単にTwitter上でシェアできるようになってもおかしくない。これはGeniusのアノテーション機能と似たようなものを想定できる。
それに追加して、今後ユーザーがメルマガ記事を読むと、よくよくツイートされた部分をハイライトして、そこをクリックするとどういうツイートがあったかを見せることが出来る機能とかも開発が可能になる。
Twitterは既にアプリ内でロングフォームのコンテンツが作られている。1回のツイートで140文字しか入れられないため、多くのユーザーはスレッド機能を使って長文を書いている。それを考えると、TwitterもThreaderアプリと同じように、長めのスレッドを書いた人にスレッドを記事化できるオプション、もしくは自動的に記事化するサービスを儲けても良いかもしれない。
Substackとほぼ同じ機能を持つRevueを取り入れるだけで、Twitterは自社の優位性を活用してメルマガ市場のシェアを一気に増やすことができる。しかもこれはTwitter CEOのJack Dorseyが過去に検討していたサブスクのよるマネタイズと合致している。コストは多少かかるが、将来的にTwitterが一つのサブスクで全Revueメルマガコンテンツにアクセス出来る仕組みを考えられる(Netflix的なサービス)。Netflixとの違いはメルマガ配信サービスだと常にコンテンツ制作が必要なので、どう言うコストストラクチャーを構成するかが気になる。これはまた別途記事にて書くかもしれません。
結果としてRevueなどと連携すると、新しいTwitterのマネタイズチャンスが生まれる。
メルマガから第三者メディアのインフラ化
TwitterはRevueからはじめ、メルマガ市場に上手く入り込めば次の展開、より大きい展開が見えてくる。それはSpacesと同じように、第三者に同じインフラを提供すること。例えば、アメリカだとNew York TimesやWashington Post、日本だと日経などと連携して、各メディアで登録する際にTwitterでログイン出来るようにする。既にTwitterアカウントを持っていてメルマガ課金していれば、そのまま自動決済出来るし、今後Twitter上で面白いNew York Times記事を見ても、Twitterアカウントから見ているので別途ログインしなくて良いようになる。場合によってはTwitterはアプリ内で記事を読めるようにするかもしれない。
さらに考えられるのはメルマガと一緒に、色んなメディアのサブスクを全てバンドル化すること。実際にそれがどう言う形で上手くいくかはまだ考え中だが、どのプラットフォームよりもTwitterがこれが出来るチャンスがある。それはTwitterが今すでに情報フローのハブになっていて、どのメディア媒体よりもユーザーがいるから。
競合プラットフォームと縁を切る
お互いのコンテンツを見にくくするのは大手SNS企業の間では普通。今ではInstagram、Facebook、TikTokなどのURLをツイートしても、OGPや画像が反映されない。
上記スクリーンショットのように、New York Timesの記事はOGP(画像)が見えるが、TikTokだと見えないケースもあったり、YouTubeもURLをクリックしないと動画が見れない。
この三つの投稿を見て分かるように、Twitterがどのようにコンテンツを表示するかによって、よりクリックしたくなる・しなくなるのが変わる。今後はSubstackやClubhouseのOGPを一切表示せず、ただURLが表記されるようになる可能性もある。そしてそれ以上に、両者に対して重要なTwitter連携を切ることも可能。
Clubhouseの場合はTwitter IDを使ってログインすることが出来て、恐らく裏のフォロワーのオススメのロジックの一部にTwitterのフォロワー数や誰をフォローしているかを考慮している。それ以上に、ClubhouseはTwitterを使って今後行われるトークを事前告知を簡単に出来るようにしている。その事前告知が見にくくなると、Clubhouseへのトラフィックがへる可能性がある。
Twitterが連携を切ると一番困るのはSubstack。今は恐らくほとんどのSubstackコンテンツのディスカバリーがTwitter上で行われている。TwitterはSubstack記事をツイートする際にOGPを見にくくしてトラフィックを下げることも出来るし、Substackの重要なユーザー獲得ツールのTwitterでフォローしている人たちがSubstackを使っているかをチェックするツールも止める事ができる。そうするとSubstackが既にあるディスカバリーの弱点がさらに深まり、Revueへ移行するユーザーが増えるかもしれない。
Twitterは過去に連携を止めたことがある。最も有名な事例はMeerkat。2015年2月にローンチしたMeerkatはTwitterフォロワーに簡単にライブ動画配信が出来るサービスで、アプリリリース後に人気が急増した。Meerkatがローンチしたすぐ後に人気テックカンファレンスのSXSWで大絶賛され、すぐに50万ユーザーを達成した。過去にはTwitterなどがSXSWをきっかけとして爆発的に伸びた経歴もあったので、Meerkatはかなり期待されていた。期待値が高まる中、Meerkat CEOのBen Rubinさんがある土曜日にTwitter社から電話がかかってきて、Meerkatが使っていたTwitterのソーシャルグラフへのアクセスを取り消すと言われた(取り消す2時間前に電話があったとBenさんが語る)。
TwitterがMeerkatとの関係性を切った理由は明確。Meerkのローンチ直前にTwitterはMeerkatの競合サービスのPeriscopeを$100Mほどで買収していた。関係性を切って、Periscopeがローンチした際にTwitter上でのMeerkatとPeriscopeへの配信URL数を見ると、差が出たのがわかる。
Meerkatは200万ユーザーまで辿り着けたが、TwitterやFacebookがライブ配信へ展開をすると理解し、最終的にHousePartyへピボットした。
もちろん同じようなことをTwitterがやるとは限らないが、RevueとTwitter Spacesを持っている以上、SubstackとClubhouseは正式に競合となった。そして両者、特にSubstackはTwitterが非常に重要なパートナーであるため、多大なリスクを持つこととなる。
Twitterは自社が持つ優位性のディスカバリーをRevueやSpacesを通して次なるプラットフォーム展開がこれで可能になる。
全てのサービスが統一される、ディスカバリーからエンゲージメントプラットフォーム
Twitterは素晴らしいプラットフォームでありながら、最も勿体ないSNSでもある。Twitterは現在ほとんどのオンラインコンテンツ(特にテキストコンテンツ)の最高のディスカバリープラットフォームとなっている。
コンテンツのユーザー獲得するのに最も優れたプラットフォームであるTwitterはかなりの価値を各メディアに提供しているが、自社のマネタイズには繋げられていない。
例えば、Substack上でライターが記事を書けば、以下が一つのコンテンツに対して各ステークホルダーが提供する価値:
・ライター:記事/コンテンツを作る
・Substack:簡単にコンテンツを作れるプラットフォーム
・Twitter:ユーザー獲得と拡散するプラットフォーム
逆に、各ステークホルダーがもらう価値(お金)は以下となる:
・ライター:新規登録者でマネタイズ出来る
・Substack:新規登録者が課金すると10%もらえる、コンテンツ拡散によって新規ライターが登録するかもしれない
・Twitter:ほぼマネタイズ出来ていない
簡単に見せると、このようになります。
もちろんコンテンツがツイートとして拡散すれば、Twitterは多少広告収入をもらえる。ただ、Substackなど記事のツイートの場合、そのURLをクリックしたらSubstackページに飛ぶので、結局数秒しかTwitterへエンゲージしてないため、ほとんど広告収益になっていない。
上記はSubstackの事例だが、これはYouTube、note、Medium、メディア媒体、Spotify、ポッドキャストなど、どのコンテンツでも同じ。Twitter上で拡散して新規ユーザーを獲得して、Twitterからユーザーを自社サイトやアプリや誘導させるのが今の現状。そしてそれに対してTwitterは一切税金を取っていない。
この問題を解決するために、Twitterはエンゲージメントを高めることにフォーカスして、マネタイズオプションを増やす方向性が自然な流れ。
Twitterのエンゲージメントへのフォーカス
実はTwitterのMAUはここ数年フラットになっているが、DAUが伸びている。まずMAUは2017年から3.2億〜3.5億ユーザーのままで増えていない。
ただ、DAUを見ると、2017年では1.09億人だったのが、2020年9月時点では1.87億人まで伸びている。
TwitterとしてはMAUの成長も欲しいところだが、売上向上のためにはDAUの成長の方がやりやすいと考えているはず。その第一ステップは、Twitterでコンテンツを見つけるのだけではなく、Twitter内でコンテンツ消費するプラットフォームになること。
ディスカバリーからエンゲージメントを増やすには、Twitterが自社でコンテンツ制作能力を持ち、その制作と消費がアプリ内で可能にするのがベスト。そう考えると、これからのTwitterの流れは以下のようになる気がする。
同期音声 + メルマガ + ポッドキャスト + ??? ➡️ コミュニティのコンテンツ展開
今はSpacesとRevueと連携して、Twitter内でリアルタイム性の音声会話とロングフォームテキストを消費できるようにする。後にそこにポッドキャストと、後ほど話す新しいコンテンツが加わり、ツイートから外部コンテンツへ誘導させてたのをプラットフォーム内にキープする事が可能になる。そして、プラットフォーム内にいれば、コンテンツからツイートや他のコンテンツフォーマットへ誘導させる事ができる。例えば、Twitterに訪れるユーザーはバズっているメルマガ記事がバズっているのを見て、その記事をTwitter内で読む。その記事を読んでいる間、自分がフォローしている他のTwitterユーザーがこの記事についてSpacesでディスカッションしているのを見て、そこに参加する。そして参加している間に、その中で共有されるコンテンツ(ツイート、ゲーム、動画など)を消費して、さらに次の記事、友達、ツイートを消費するようになる。Twitterが元々ディスカバリープラットフォームであるからこそ、エンゲージメント出来る機能を追加できると本当に強くなる。
実際に、Revueを買収した際に、Twitterはライターがオーディエンスと簡単に繋がれるように、Twitter上でライターが登録者と会話できるようにしたいと言っている。これはSpacesとRevueが連携する想定はできる。
ただ、今の流れでひとつ足りてない所がある。それは非同期な形でクリエイターがファンと接する場所。Twitterが一部その需要を満たしているかもしれないが、少し機能として足りていない気がする。そのため、Off Topicの予想としては、2021年中にTwitterはどこかのコミュニティツールを買収すると考えている(例:Geneva、Circleなど)。
今後Spacesの会話を一部記録してポッドキャスト化したり、過去の記事やコンテンツを溜め込む場所が必要になるのと、ファンがお互い非同期でインタラクティブに話し合える場所が必要になる。それを既存のTwitterで解決するのか、それともTwitter内にそれ専用のコミュニティツールを開発・買収するのかは分からないが、少なくともTwitterはただのディストリビューションプラットフォームとして終わらない可能性が日々高くなっている。
サブスクコンテンツを第三者にオープンにしてマネタイズ戦略を拡大
Twitterの可能性は第三者を巻き込むとさらに大きくなる。しかもこの巻き込み方は色んなレベルがあるので、Twitterサブスクで全てのメディアやメルマガ登録が出来なくても、各社のサブスクインフラとしてTwitterが入り込むだけでもTwitterとしては価値があるはず。最近だとForbesが自社の記者に対して給料を払いながら独立して課金型のメルマガを試せる試作を作っている中、それと似たような精度をTwitterはどのメディア企業とも作れる。さらに、TikTokやSnapchatみたいなクリエイターファンドみたいなものを作れば、そこから給料分の支払いなどを行って、メディア企業の負担を削減することも可能となる。
そんな中、Twitterにはもう一つ新しい拡大戦略を取れると思っている。それは非同期型のショートフォーム音声領域。
Twitterが非同期型のショートフォーム音声領域に入るべき理由
どのフォーマットもロングフォームから始まって、ショートフォームへシフトしていった。動画だと映画・テレビ・NetflixからYouTube・Meme・TikTokなどへ流れ、テキストだと大手メディア・新聞・メルマガ・フォーラムからTwitter・SMS・チャットへ変わってきた。音声の場合はポッドキャスト・音楽(Spotify)、そして最近だとClubhouseが入ってきて、音声メッセージ(WeChat)や音声Meme(TikTok)のシフトが行われている。ただ、その中でまだショートフォームへシフトしてないコンテンツフォーマットは、パブリックな非同期型のショートフォーム音声。いわゆる音声メッセージのSNS・UGCプラットフォーム。
元々Anchorは音声版のTwitterとしてローンチしたが、結果としてポッドキャスト制作ツールへピボットした。音声メッセージが流行っている中、何故非同期の音声SNSが流行らないのでしょうか?非常に興味深い領域で、今後もしかしたら新しいSNSが入り込める市場かもしれない。
この領域にTwitterが入り込めると思う。完全UGCプラットフォームにはならないが、上手くユーザーのコンテンツを非同期型のショートフォーム音声に変換して、新しいディスカバリー機能を作れると思っている。
まず、Twitterがこの記事で話したことを諸々エクセキューションしている前提で話すと、Twitterはディストリビューションからエンゲージメントプラットフォームへ進化していて、そこで色んなコンテンツへアクセスできるようになっている。そうすると、Twitterはツイート、メルマガ、Twitter Spacesコンテンツなどを音声化することが可能になる。
Twitterが最初に音声ツイート機能をローンチした時から個人的に気になっていたUIは、Twitterアプリの下にコントロールUIが出るため、Twitterをスクロールしながら音声コンテンツを聴けるようになっていること。これは一部本来のTwitterフィードの広告を表示させてマネタイズすることでもあるが、同時にTwitterがどこかのタイミングでロングフォーム音声(ポッドキャストやバックグランド音声)を検討していると予想できる。
色んなコンテンツを音声化して、その中で最もエンゲージされそうな部分を切り取って編集が出来れば、かなり面白いコンテンツ制作が出来る。それが出来るとTwitterではツイート、Spaces、メルマガ制作だけではなく、それらのコンテンツをリミックスして違うフォーマットでも配信できる、TikTokやVineと近しい新しいコンテンツ制作フォーマットを作れる。
Twitterのコンテンツを全て音声化 ➡️ 自動編集 ➡️ ショートフォーム音声の誕生
あまり想像が出来ないかもしれないので、事例で説明します。例えば、Off Topicが長めのツイートスレッドを出して、それをRevue機能などを通してメルマガの記事化します。その記事自体をTwitter上で将来ワンクリックで音声化もできるようになる。そうすると記事を読むのではなく、他のことをしながら聞くことが可能になる。しかも将来的にはクリエイターが自分の声をTwitter上で登録すると、もしかしたらそのクリエイターの声(もしくはユーザーが選んだ声)でその記事を聞くことができる。
そしてその記事を読んで面白いと思った読者はTwitter Spacesでその話をしたり、記事内で面白かったテキストをシェアするようになる。これも全部その記事を読んでいる最中に、簡単に作れるようにTwitterは設計できる。
ここからショートフォーム音声が入り込めるチャンス。Twitterは記事のどの部分が面白かったのかもしくは記事が一番伝いたいことだったのか、どの部分が最も共有されたのか、そしてTwitter Spacesでこの記事について何の会話が一番盛り上がったのかが分かる。それをひとつずつ分けて音声コンテンツにする、もしくはまとめてハイライト音声コンテンツを自動生成出来れば、非常に面白い。Twitterがこれを出来るようになると、どのコンテンツ(ツイート、ポッドキャスト、記事など)もより縮小して配信されるようになるので、ディスカバリーに繋がる。
果たして、Twitterはこんなことが出来るのか?これを実行するには、Twitterはもう2社を買収する必要があります(もしくは自社で開発する)。一つは書き起こし・音声化ツール、もう一つは自動音声編集ツール。これを解決するソリューションは最近実は出てきてます。
書き起こし・音声化ツールのDescript
まずTwitterは音声の書き起こしや、コンテンツの音声化する必要がある。既にGoogle HangoutsでもTwitter Spacesでも書き起こしを行っているが、書き起こしと音声化を上手くやっている会社をTwitterが買収すると一気にこの領域で勝てると思っているので、個人的にはTwitterはDescriptという会社を買収するべきだと思っています。
Descriptは音声や動画を簡単に編集できるツールです。音声・動画ファイルをDescriptにアップロードすると自動的に書き起こされ、書き起こされたテキストを編集すると自動的に動画や音声ファイルも修正される。
英語だと音声で「umm」や「uh」(日本語だと「えっと」や「あー」など)を自動的に取り除いたりできると同時に、テキスト入力するだけで自分の声を自動生成して音声の中に入れられることができる。実際にプロダクトのデモを見ると、Descriptの凄さが分かる。
TwitterがDescriptのようなサービスを買収すれば、Twitter上に存在する全ての音声データ(ポッドキャストやTwitter Spaces)の書き起こしが出来ると同時に、自動編集でいらない言葉を取り除くことが可能になる。そして、テキストコンテンツ(ツイート、メルマガ、メディアの記事など)を全て音声化することも可能になる。自分の声を使いたくなくても、Descriptは既にストック音声を用意している。
TwitterはこれでポッドキャストやTwitter Spacesを記事化してテキストコンテンツに作り返すことも可能なので、色んな可能性を感じます。
自動音声編集ツールのPodz
コンテンツの書き起こしと音声化を行ったのは良いが、メルマガやロングフォームの記事を音声化するだけだと足りない。結局音声化しているだけだとポッドキャストのサプライを増やしているだけで、音声市場の最も高い課題を解決していない。ポッドキャスト(及び音声)業界での1番の課題はディスカバリー、いわゆるコンテンツが見つけにくいこと。
ポッドキャストの数は増えているのに、未だに解決されないのがディスカバリー、いわゆる良いポッドキャストを見つける方法。今だとSpotifyとAppleのランキングやレコメンド、もしくは口コミでしか新しいポッドキャストと出会えない。実際にポッドキャストのダウンロード実績を見ると、トップ1%のポッドキャストは平均3.5万ダウンロードがあるが、トップ20%のポッドキャストだと各エピソードは平均1,000ダウンロードしか取れない。中央値は124ダウンロードなので、これだと良いポッドキャストを作っても、結果として誰も聞いてくれない。
Anchorなどで簡単にポッドキャスト制作が出来るようになり、ClubhouseやTwitter Spacesで音声コンテンツが増えるのに、何故ディスカバリー問題が解決されていないのか?一つはコンテンツ消費のコストの高さ。ポッドキャストや長い音声コンテンツのクオリティレベルを事前に分かる術がない。ダメなポッドキャストを聞くだけで40分も時間の無駄をすると考えると、よりリスクの低いコンテンツフォーマットを選ぶのが当然。NetflixよりTikTokの方が見やすい一つの理由は、ダメなTikTok動画を見てもたったの15秒しか損しないから。そうすると、一回のセッションで何回も見ることが出来て、なおかつレコメンドコスト(消費コスト)が低い音声コンテンツを作らなければいけない。
そこで出てくるのがPodzという会社。Descriptと同様、TwitterはPodzを買収することでTwitterが非同期型の音声SNS領域へ入り込むことができる。
Podzは機械学習を活用してユーザーの好みに合わせて音声コンテンツの最も良い部分を切り取ってミニコンテンツ化するサービス。今はポッドキャストで英語しか対応していないが、かなり制度が高く音声コンテンツの最も伝えたいことを自動的に選出して別コンテンツとして切り出すことが出来ている。
これを実現するためには、Podzは音声編集チームを作って、色んなフリーランスの記者を採用して5,000以上のソースから10万時間分のポッドキャストコンテンツを切り取って、それを機械学習用のデータサンプルとして使った。しかもPodzのチームは過去SNS領域や検索エンジンを開発していた人たちなので、かなり特殊なアルゴリズムになっているはず。
TwitterがPodzを買収すると、長文テキストコンテンツをDescriptを音声化させるだけではなく、そのコンテンツの最も面白い部分をPodzの技術を活用して切り取って、動画や音声コンテンツとして投稿できるようになる。ポッドキャストやTwitter Spacesコンテンツであれば、それをショートフォームの音声コンテンツ、もしくはツイートスレッドにも変換が可能になる。
しかも、Twitter上でRevueとの提携によりメルマガをTwitterアプリ内で見ることが出来て、さらにその記事のテキストをハイライトするだけでツイートできるようになれば、面白い・共有されやすいデータをTwitterがPodzの機械学習のデータセットにインプット出来る、非常に相性の良いループが生まれる。さらにTwitter Spacesでの絵文字のリアクションをベースに良いコンテンツを切り取るなど、Podzの制度をあげられるチャンスも出てくる。
これは非同期型のショートフォーム音声SNSとは若干違うかもしれないが、Twitterはロングフォームの音声・テキストコンテンツをショートフォームに変換させることが出来れば、今までのポッドキャストや音声業界で最も課題にしていたディスカバリー問題を解決できるかもしれない。
Twitterが作れる世界:Before / After
今現在のTwitterはSubstack、Spotify、Clubhouseなどコンテンツプラットフォームのディストリビューション・ディスカバリーツールでしかない。そうなるとTwitterはプラットフォームとしては重要な立場であるものの、上手くマネタイズが出来ない。さらに、クリエイターと直接繋がることが難しくなる。図にすると以下のような形となる。
Twitterの最近のSpacesのプロダクト開発及びBreaker、Ueno、Squad、Revueなどの買収の動きを見ると、コンテンツプラットフォームの領域に入ろうとしている風に見える。コンテンツプラットフォームになると一つのコンテンツを自動的に他のコンテンツフォーマットへ変換したり、各コンテンツフォーマットに応じてマネタイズオプションが増える。そして、何よりもコンテンツクリエイターと直接繋がることができる。
コンテンツクリエイターと繋がるとクリエイターとファンのエンゲージメントプラットフォームを作ることが出来る。ここではコミュニティ、ビデオメッセージ、クリエイターへの投資など様々な可能性が生まれる。そして全てのデータをTwitterはソーシャルグラフ、興味グラフ、そしてトークグラフとして集計して、そのデータを元にクリエイターファンドを通して新・既存クリエイターへ金銭的支援をすることで全体像の循環が加速する。
これを絵にすると以下のようになる:
実際に上記絵のようにTwitterがエクセキューションできれば、どのプラットフォームよりもニュース・情報系コンテンツで強いプラットフォームとなり得る。それだけのポテンシャルをTwitterが持っている。
ただ、問題はTwitterが本当にこのようなビジョンをやり遂げられるか。
Twitterの課題はTwitter自身
Twitterのポテンシャルに気づいているのはOff Topicだけではない。多くの人はTwitterは勿体ないプラットフォームと語っている。そしてTwitterも今までPeriscopeやVineなどかなり面白い買収を行っているが、それを上手く導入が出来ていない。そのため、15年前に開発したタイムラインからほとんど変わっていない。そもそも今のDM機能も本来はFacebook Messenger、WhatsApp、Snapchat、Signalと競合するべきものだったのが、ほぼ使われない機能となっている。Twitterは未だに興味グラフをTikTokみたいな使い方も行っていない(興味ベースでコンテンツのレコメンド)。
この課題はTwitter社内の政治、プライオリティー付、そしてクリエイターとの関係性などが原因かもしれない。そもそも2014年から2018年の間でTwitterのHead of Productは6回変わった。プロダクトの方向性を決める人がそれだけ変わると、会社としてどう動くかがわからなくなる。そしてVineの買収で証明したのは、当時のTwitterはクリエイターのことをそこまで気にしていなかったこと。これはTikTokが人気になるまでは他のプラットフォームも同じだったので、今は変わっていると願うしかない。
これらを解決するにはTwitter社内がビジョンを統一して、長期目線を持って、クリエイターファーストで動く必要がある。Clubhouseも自社のマネタイズよりクリエイターのマネタイズにプライオリティーをつけると同じように、Twitterもコンテンツプラットフォーム領域へ入る際にはクリエイターを軸として全てのアクションを取らなければいけない。とりあえずRevueの買収はその方向性に今向かっているように見える。元々Revueが6%の手数料をライターからとっていたのを、Twitter買収によりそれを5%に下げている。
TwitterはVineで出来なかったクリエイターを今後の戦略の中心としておけば、もしかしたら今まで見えて来なかった成長と進化が待ち構えているかもしれない。今までの優位性であるディストリビューションの力を持ちながら、ニュース・情報系のクリエイターがマネタイズしてファンとエンゲージメントが出来るプラットフォームになり、Twitterは裏ではソーシャル、興味、トークグラフを描き合わせてクリエイターエコノミーへ投資しながら新しいプロダクト開発を行う、TikTok・FBと並ぶようなプラットフォームになる可能性を秘めている。
Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikikusano)